2016年09月10日

同人の新詩集 2冊

 ガーネット同人の新詩集が相次いで出ました。廿楽順治の『ハンバーグ研究』(改行屋書店)と神尾和寿の『アオキ』(編集工房ノア)の2冊。
 廿楽順治は5月にも『詩集 怪獣』(改行屋書店)を出したばかり。今回の『ハンバーグ研究』の奥付の発行日は6月30日。従って2ヶ月連続での上梓ということになる。『詩集 怪獣』は3年ほどにわたって本誌を中心に発表されたものだが、今回の詩集は今年の2月から5月にかけて自身のブログに発表したものがまとめられている。いやはや、すごい精力だなと感心させられる。
 それはともかく、『ハンバーグ研究』の中身に目を向けると、これまでの下揃え形式を封印し、やっと普通の上揃えに戻っている。これはよかった。本人には下揃えにすべき必然性があったのだろうが、読む方にとってはすこぶる読みにくい。また1作の行数も見開きに収まる長さで、これも読みやすい。内容的には、前作『詩集 怪獣』とは題材が違っているものの、テーマへの迫り方、書きぶりはさほど変わらない。いわゆる廿楽節とでもいうのだろうか、斜めから攻め込み、さりげなく飛躍しつつ、対象も読者もタイミングよく突き放す。そこが廿楽詩の魅力と言えるだろう。
 今回の詩集では明治時代の新聞の活字のようなフォントが使われ、漢字も旧字(正字)が使われている。別に時代設定が明治でもないので、これも下揃えと同じく、気分の問題なんだろうな、きっと。ただ、ここまでするのであれば、仮名遣いも旧仮名遣いにすれば良かったように思うが、本人の言によれば、「旧かなは教養がないので書けないため…」とのことでした。

 神尾和寿『アオキ』は、これも本誌を中心に発表された10行から15行ぐらいの短詩群が1冊にまとめられている。神尾詩の魅力は日常の出来事(それもかなり俗っぽい出来事)から切り込みながら、いつのまにか非日常に転換される、その鮮やかさにある。廿楽詩が「突き放す」手法だとすれば、神尾詩は自分の世界へ「連れ込む」手法だと言えるかもしれない。男女の関係にたとえれば、神尾詩の方が危険な存在だと言えるかもしれない(これはあくまで詩の話です。念のため)。

 最後にそれぞれの詩集から巻頭詩をご紹介します。お気に召されたらご購読を。

   天声人語
           廿楽順治

天声は、まあよくひとを殺すことができる。
ひとのおしゃべりは低く、
濡れて殺されることもある。
(二月一九日。)
死んで花実がさくものか。
なんて。
人語は意識のない、芋虫みたい。
車内で天声人語を読む低いおじさん。
新聞紙で死にかかっている。
(イトーヨーカ堂事件。)
となりの女は携帯がすごく不潔だ。
まあみんなそうだけどね。


   アオキさん
           神尾和寿

アオキさんが
まだ来ない
イノウエさんなら
三年前から来ている
ドラム缶にまたがってたばこを吸っている
旨そうだ
イヌのウエダ君と
サルのエグチ君に声をかければ
けんかの最中だ かみつかれてひっかかれて
すごく痛いのかもしれない
アオキさんだけが いつになっても
来ない
はじまらない

posted by 高階杞一 at 18:56| Comment(0) |