2019年05月13日

新刊3冊−その2

 先日の新刊紹介の続きです。「ガーネット」同人・大橋政人の初エッセイ集『まど・みちおという詩人の正体』(未来社)と「びーぐる」編集同人・山田兼士の第5詩集『羽の音が告げたこと』(砂子屋書房)の2冊。
 『まど・みちおという詩人の正体』は、まど・みちおの信奉者とも言えるほど熱烈なファンである大橋政人がガーネットをはじめとして各誌に書いたまどさんに関わるエッセイを中心にまとめた書。ここで大橋はまど・みちおの詩を神秘主義という観点から捉えようとしている。まど・みちおと神秘主義というのは違和感を覚えるが、本書を読めばなるほどと納得されてきたりもする。
「(まどさんの詩の)アリやリンゴから神々しさが漂ってくる。まど・みちおという詩人は明治以降の詩の歴史の中で全く類例のない、神秘主義詩人という名の詩人だった。そう呼ぶのがまどさんには一番ふさわしいように思われる。」(「まど・みちおという詩人の正体(その1)」より)

 山田兼士『羽の音が告げたこと』は、家族を描いたこれまでの詩集の延長線上にある詩集だが、本書では「父」がメインテーマとなっている。自分の「父」、そして「父」である自分。昭和から平成へと至る時代の様相が、「父」というフィルターを通して描かれている。
「母の死から五年後/父も死んで/消えていく家族の儚さゆえ/軽い虚脱感を覚え始めた二十代の終わり頃//そんな時 そこに/生まれてきた きみは/透明な羽を背にのせていた/ぼくを父にするために」(「羽の音が告げたこと」より)

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2019年05月11日

新刊3冊−その1 斉藤倫『ぼくがゆびをぱちんとならして……』

 斉藤倫さんの『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)が届きました。これは福音館のウェブサイトに連載されていたエッセイを書籍化したもの。それにしても長い題名ですねえ。
 斉藤さんは詩人として出発し、今は絵本や童話の世界で活躍されています。本書は、主人公である「ぼく」が家に訪ねてくるこどもの相談事にのりながら詩を1篇ずつに紹介するという体裁を取っている。いつも何か食べているときに限ってこどもがやってくるという設定もおもしろい。
 紹介されている詩人は藤富保男、松井啓子、石原吉郎、辻征夫、まど・みちお、松岡政則、入沢康夫など10数人。いずれも著者の好きな詩人なんだろう。拙作の「人生が1時間だとしたら」も取り上げられいます。
 表紙の絵は僕の好きな漫画家の高野文子さん。「びーぐる」6号(2010年)で「詩への航海 異境の海へ」という特集をしたとき、僕は高野さんにインタビューしています。そのとき彼女は、「もうマンガは描かない。(挿絵等で)誰かのお手伝いをしたい」と話していました。今回の表紙もその「お手伝い」のひとつですね。
 「もうマンガは描かない」と言いながら、その後1冊、漫画作品『ドミトリーともきんす』(2014年)が出ています。やっぱり描かずにはいられなくなったのかな(笑)。高野さん、前言撤回OK。もっと描いてください!
 今回、新刊3冊を紹介する予定でしたが、時間切れになりました。後の2冊はまた後日。

斉藤倫「ぼくがゆびをぱちんとならして……」表紙.jpg

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2019年01月16日

森雅之『追伸』

 先日、詩誌「スフィンクス考」の誌名は漫画家の伊藤重夫さんの作品集『チョコレート・スフィンクス考』から名付けたと書きました。ついでながら、そのあとに創刊し、現在も続いている「ガーネット」の誌名もマンガの作品名が由来となっています。作者は森雅之さん。森さんの第1作品集『夜と薔薇』に収められた「ガーネット」に魅せられ付けたものでした。短いけれど心に残る作品で、誌名にはこのマンガのように、「読む人の心に深く届く詩を」という思いを込めています。
 この『夜と薔薇』との出会いも今となってははっきりとしません。伊藤重夫さんのマンガと同様、知人から薦められ入手したのだと思います。その経緯はともかく、一読後たちまち惹かれ、それからずっと新刊が出るたびに読み続けています。
 森さんは短編作家ですが、ひとつだけ長編のマンガを描いています。それが標題に記した『追伸』。去年の9月に新装復刻版が出たようです。まだ携帯もない時代、遠距離恋愛をする若い男女の心の機微が描かれています。帯には「どんどん力が抜けてゆく… 途中2ウル。後に3ポタ。私の凝り固まった全神経は瞬時に溶かされた。」と女優の永作博美さんが記しています。本当にこの言葉のように心に沁みる1冊です。多くの人に読んでもらえたらと思っています。
 森さんは現在「びーぐる」に短編を連載中。こちらもぜひご愛読を。

 昨日で大学の授業も終了。長い春休みに入りました。

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森雅之『追伸』(バジリコ 2004年6月刊)

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2019年01月11日

伊藤重夫『ダイヤモンド・因数猫分解』

 漫画家の伊藤重夫さんから新刊を頂いた。書名は『ダイヤモンド・因数猫分解』(アイスクリーム ガーデン 2018年11月刊)。前作の『踊るミシン』が出たのが1986年だから実に32年振りの新刊である。そしてその前の第1作品集『チョコレート・スフィンクス考』が1983年。単行本はたったのこれだけ。だから今回の新刊が3冊目と言うことになる。氏の作品を愛してやまない人たちが2017年に『踊るミシン』の復刊プロジェクトを立ち上げ、同年に復刊を果たし、その延長で今回の本も刊行された。
 伊藤さんとは当時2度ほど会っている。出会いのきっかけは何だったのか今でははっきりとしないが、たぶん伊藤さんと親しかった知人の誰かから『チョコレート・スフィンクス考』をもらって読んだのがきっかけではなかったかと思う。この本は発行が「跋折羅社」となっているが、実質は私家版に近いものなので、書店でたまたま見つけて買ったとは思えない。
 何はともあれこの『チョコレート・スフィンクス考』を読み、大いに感銘し、自分の同人誌に紹介したりもした。1984年5月に五月女素夫(そとめ・そふ)と始めた同人誌「スフィンクス考」は伊藤さんの許可を得て名付けたものだった。
 今回の『ダイヤモンド・因数猫分解』には『チョコレート・スフィンクス考』の「『塔をめぐって』より」などがリミックスされて収められている。
 氏の漫画に感銘したのは何よりそこに詩が感じられたからだった。例えば次のようなフレーズ。

 私の右のポケットに
 世界をしのばせている
 正確に言うと
 銀河系宇宙
 この前私が盗んだものだ
 右手に力を入れると
 銀河は消えてしまう
 消滅するのだ

 私は海へ行き
 それを力いっぱいに投げた
 キラリともせず
 海の底に沈んでいったあと
 再び元の場所に
 もどっていった。

 時間がたてば
 星は顔を出す
 そして前よりも
 強く輝きを
 ましているだろう

 私が持っている間
 大切にして
 毎日みがいて
 いたんだから

 このフレーズは表題作とも言える「チョコレート・スフィンクス・アゲイン」の中で、主人公の女の子の心の声として綴られている。そしてこの作品の続きが長編『踊るミシン』となり、さらに新刊の中の短編「ママレードのプリンセス」にもつながっている。
 ユーモアと少しの倦怠感、そして乾いた抒情。それが伊藤重夫作品の魅力と言える。

 氏は現在、漫画から離れ、絵本や本の挿画家として活躍しているが、もう一度漫画を書いてもらえたらと願う。
 最後に会ってから30年以上経つ。2年ほど前、ひょんなことから知人である某出版社の社主が氏と親しいと分かり、3人で会おうかという話になったが、その時は氏が体調を崩していて実現しなかった。今回の出版を機に会う機会が訪れるかもしれない。その日を楽しみに待ちたい。
 
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『ダイヤモンド・因数猫分解』

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『踊るミシン』

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『チョコレート・スフィンクス考』

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2016年04月30日

ピノキオの冒険

 ゴールデンウイークに突入しました。テレビには国内外の観光地に出かける人たちの姿が映っています。年中ゴールデンウイークのようなこちらは、連休だからと言って特にすることもなく、いつも通りに時間は過ぎていきそうです。
 熊本や大分ではまだ大きな余震が続いていて、いつもなら賑わうはずの観光地も打撃を被っているとのこと。家にいて何もできずにいるこちらは胸が痛みます。余震が早くおさまればいいのですが……。

 このところ、特に差し迫った締め切りもないので、読書に没頭しています。昨日から読み始めたのが「ピノキオの冒険」(西村書店)という本。訳者の金原瑞人さんからずいぶん昔にもらった本で、きれいな挿し絵の入ったクロス貼りの豪華な本です。ピノキオならこどもの頃に読んでいるはずなので、挿絵だけ眺めてそのままになっていたのですが、ふと思うところがあって読み始めました。
 読んでみてピノキオの印象がずいぶんと違うのに驚きました。本の中のピノキオはうそつきでなまけものでわがままで、どうしようもなく困った子です。イタズラ好きだけどもっといい子だったような記憶があるのは、昔読んだのがこども向けに手を加えた本だったからかもしれません。
 それはともかく、本の後半に「マスチフ犬」という犬の名が出てきます。「マスチフ犬」ってどんな犬なんだろうと調べると、顔がブルドッグに似た超大型犬でした。国によっていろんな種類があるようですが、闘犬などに使われる大きな犬を指し、土佐犬などもこの種類に含まれるようです。中でも大型なのが「チベタン・マスティフ」と呼ばれる種類。トラに勝つこともあると書かれていて、びっくり。こんな犬です。

 http://matome.naver.jp/odai/2136750828612828101

 マスティフの解説はこちら。 http://www.dogfan.jp/zukan/Working/Mastiff/

 犬と言えば、我が家のコッコが生まれてちょうど9年になりました。明日が誕生日。すっかり忘れていたのですが、家人に言われて気がつきました。ということで、今日はコッコの誕生日のお祝いを買いに出かけることにしました。ゴールデンウイーク初のお出かけです。

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子犬の頃のコッコ(生まれて2ヶ月目)

posted by 高階杞一 at 12:51| Comment(0) |